第101期部門長 佐々木 元 (広島大学)
101期の機械材料・材料加工部門の部門長を拝命しました,佐々木元(げん)です.広島大学先進理工系科学研究科 機械工学プログラム 機械材料物理学研究室に所属しています.専門は,金属材料物性学,電子顕微鏡学,界面工学を基礎とした金属材料および金属基複合材料であり,材料プロセス,特性評価,組織評価を通して,これらの関係性を明らかにすることを目的に研究を行っています.近年は,特に,サーマルマネジメント材料やマテリアルズ・インフォマティクスに関する研究も行っています.出身は金属材料工学ですが,長く機械系学科に所属し,機械材料に関する研究を行っています.よろしくお願いします.
就任の挨拶として,日本機械学会の中での当部門の運営の在り方,当部門の中長期研究戦略や科学技術の進歩と関わり方についての私なりの考え方についてお示ししたいと思います.
日本機械学会では, 新部門制における3年の試行期間が終了し,試行により抽出した課題を反映して本年度から本実施をスタートさせます.新部門制では,部門間の交流を活発にする仕組みづくりが最も重要な課題であり,共通テーマに関する学術集会を複数部門で共催(合同シンポジウム)したり,複数部門講演会を同時・同場所で開催(コロケーション)するなどの具体的活動を行っていく事が求められています.当部門では,ポリシーステートメントとして『大学と企業との交流の推進,学術活動の充実,産業界への貢献と若手人材育成』を掲げて活動を行ってきました.本年度もこの理念を踏襲し,具体的活動に展開していきたいと考えています.9月27日~29日に,筑波大学筑波キャンパスで開催予定の部門講演会(M&P2022)はM&M2023材料力学カンファレンスとのコロケーション開催となります.両講演会で自由に往来できるのみならず,合同オーガナイズドセッション等も企画しており,活発な部門間交流が実現すべく努力していきます.その他,年次大会での,複数部門との合同企画や基調講演等の企画・実施,他部門との合同企画の講習会,産学交流を目的としたM&Pサロンの開催等,部門の研究会活動等を通じて,新部門制下における当部門のアクティビティを上げていきたいと思います.
ここ3年程は,コロナ禍の影響で,対面での活動が著しく制限され,思うような活動ができませんでした.まだ,注意は必要ですが,人々の交流も徐々に盛んになってきており,今年度は,コロナ前の状況に近い活動になるのではと期待しています.一方で,コロナ禍で経験したオンラインコミュニケーションは,アフターコロナにおいて,新たな学会運営様式として展開していくこととなりそうです.この新たなコミュニケーションをどの様に今後の学会活動の中に展開し,更なる活動の活性化につなげていけるのか,今,想像力,企画力,実行力が問われていると思います.この一年で少なくともそのベースを確立させ,今後の部門の発展に結び付けていきたいと考えています.これは,私自身や少数のメンバーで決めていくものではなく,部門活動に関連する様々な人達の知恵と協力が必要ですので,よろしくご協力の程,お願いいたします.
また,現在,我が国が抱えている課題として,相対的な技術力,競争力の低下への対応,持続可能型社会への実現があります.その為には,エレクトロニクスやライフサイエンス、環境・エネルギー等の幅広い産業課題・社会課題の解決に対応するイノベーションが重要です.材料科学は,これらの分野を横断する要素技術としてとらえることが出来ます.その為,科学技術の発展や,問題解決には,材料工学,材料加工分野の進歩が不可欠であり、その重要性は,更に増していくものと思われます.一方,近年,ビッグデータやAIといった情報処理技術の進展は目覚ましく,材料工学,材料加工学の分野においても,従来のような,経験や勘,長大な実験,学術的理論に基づいた解析とは異なる,長大な数の実験や論文を解析することによる新材料や新しい材料製造プロセスの開発が行われるようになってきています.新たな研究開発手法が加わることにより,高性能化,多機能化,形状自由度が増した機械部材の更なる発展が期待できます.従来において,材料工学,材料加工学が科学技術発展の律速になることがありましたが,従来型の研究手法と新たな研究手法を融合化させ,あらゆる課題に迅速に対応できるような研究開発システムを構築し,高度化する科学技術の進歩に積極的に貢献していくことが必要です.また,従来にはない,新たなる発想に基づいた新材料,新材料加工技術を開発する事により,科学技術のパラダイムシフトを起こすことも必要です.これらの使命を具現化し,広く産業界に橋渡しをしていくことが,部門に課せられた課題と思います.個々の研究者としての研鑽は重要ですが,組織として個々の力を体系化していくことも重要であり,部門として取り組む重要な課題と考えます.当部門が社会的に果たす役割は,重要であり,多岐にわたっていますが,課題を皆様と共有し,世の中の進歩に貢献できたら良いと考えています.